懐屋敏悟の徒然日記

懐かしいに触れたり訪ねたり…温故知新の世界へ

大女将

残る営業日もあと一週間程

派遣スタッフに任せていた一部の配達を、自分の仕事に戻してから約二ヵ月、お客様との直接対話する機会が増えました。

閉店が決まり、閉店のお知らせと他のお弁当屋さんのご案内、区の補助でご注文を頂いているお客様には、区指定の申請のご案内などを差し上げ、継続してお弁当注文を希望される方々が、確実に引き続きお食事を召し上がる事が出来るようにフォローさせて頂きました。

昔、御商売をされていた昭和一桁生まれの大女将のお客様からは、

『辞めてしまう日が近くなってきたし、お客様も減って来たら商売を早くたたみたいでしょうに』

と、今を案ずるお言葉をかけて下さり、有り難い気持ちになりました。


この大女将さんは、筋の通らない事には非常に厳しい方でした。

ある日、今は無断欠勤で辞めた配達アルバイトが、お届けするお弁当を間違え、再配達に伺った際に更に大女将さんに対して粗相がありました。アルバイトは、調子良く私の指示通りに仕事した報告をし仕事を終えました。アルバイトが帰った後、大女将様からご連絡を頂き、本人の報告とは違う事が発覚。空かさず、バイクを飛ばして大女将さんのお宅までお詫びに伺いました。


大女将『これくらいの事で謝りに来なくてもいいのに。』

私『いえいえ、商売ですから、儲けを頂戴する限りは、甘えられません。』


雇われの身とはいえ、お店を預かる限りは責任があるので些細なことでも真剣にならないとという想いから、自然とそんな言葉が胸から出てきました。


大女将『そうよね、解るわその気持ち。私も商売好きだからね。昔、商売やっていたから痛い程解るわよ社長。』

以来、こちらのお宅でも社長と呼ばれるようになりました。そして、後日…


大女将『社長とお兄ちゃん(副店長)が一生懸命やってくれるから主人の弁当も追加よろしくね。』


筋の通らない事には非常に厳しい大女将さんは、人情味溢れる方でもありました。


その様な大女将さんからの温かい一言、あと僅かな日々のお付き合いに

『早くたたみたいよね…』労いの言葉をかけて下さいました。

しかし、私は最後まで手を抜くことは考えられず、次の事を浮き足立って考えることもしたいと思いませんでした。日々の積み重ねの結果、それをやり遂げた時に得る結果、その結果を得て初めて次が見えて来ると信じて疑いません。この事は、千葉で無農薬の米を作った時に得た宝です。


社長という名の店長『今は、閉店までの日を一日一日しっかり働き、立つ鳥跡を濁さずの心境です。次の事は、考えられません。最後まで御指導よろしくお願いします。』


大女将『エライ!   社長、頑張ってよ。』


どの様な環境、どの様な境遇でも学ぶことは必ずある事をお客様が教えて下さいました。小さな事にも気付かないともったいないです。大女将さん、お付き合い下さり、また私達を厳しく温かく育てて下さりありがとうございました。